2013(平成25)年度 審議課題

第1回委員会審議 | 平成25年4月26日 | 審議内容 |
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第2回委員会審議 | 平成25年6月13日 | 審議内容 |
第3回委員会審議 | 平成25年7月29日 | 審議内容 |
第4回委員会審議 | 平成25年8月21日 | 審議内容 |
第5回委員会審議 | 平成25年11月26日 | 審議内容 |
第6回委員会審議 | 平成25年12月24日 | 審議内容 |
第7回委員会審議 | 平成26年1月29日 | 審議内容 |
第8回委員会審議 | 平成26年2月25日 | 審議内容 |
2013(平成25)年度 第1回委員会審議
平成25年4月26日
- 申請者
- 消化器外科医長
松本 敏文 - 申請課題
-
2013-001
局所進行直腸癌に対するSOX+bevacizumab併用療法またはSOX+cetuximab併用療法による術前化学療法の有効性および安全性の検討-多施設共同第Ⅱ相臨床試験-~OITA-trialⅡ - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
-
1)研究要旨
治癒切除可能大腸癌の治療法は外科手術が第一選択となる。本邦では骨盤自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清が普及しているが、予防的側方リンパ節郭清の意義は証明されていない。欧米では腫瘍の縮小効果が高いことや術後照射に比べて毒性が少ない等の利点から術前放射線療法について多くの検討が行われその有用性が示された。
また、術前化学放射線療法による有用性も報告されている。術前化学放射線療法のメリットとして良好な局所制御率が挙げられるが、デメリットも報告されている。特に術前に放射線療法を施行することによる晩期障害として、排便や排尿、性機能における障害が挙げられる。
しかし近年の分子標的薬を用いた強力な化学療法でも高い抗腫瘍効果が示されており、術前放射線化学療法と同等の局所制御が得られる可能性がある。
本研究は、局所進行直腸癌を対象に術前に分子標的薬併用化学療法を使用してその有効性および安全性を多施設共同第Ⅱ相臨床試験として検討するものである。
(参考:実施計画書1,2p7-9)
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 副薬剤科長
大神 隆行 - 申請課題
- 2013-002
多施設共同による先発・後発テイコプラニンの母集団薬物動態解析 - 申請の概要
- 抗生物質である「テイコプラニン」を投与した患者を対象に、先発医薬品と後発医薬品の母集団薬物動態解析を実施し、薬物動態パラメータに影響を及ぼす因子を探索する。さらに、得られた個体間・個体内変動の定量特性値から、病態や患者背景に応じた個別の投与法を確立することを目的とする。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-003
胃癌肝限局性転移の外科治療に関する後ろ向きコホート研究(KSCC1302) - 申請の概要
-
多施設による胃癌肝限局性転移の外科治療が施行された症例の後ろ向きコホート研究。胃癌限局性肝転移に対する手術症例に関する現在の実情を調査する。本コホート研究の第一の目的は、胃癌の肝限局性転移の外科治療の有用性を明らかにすることであり、肝転移の状態や胃原発巣の臨床病理学的因子も検討して、予後因子となり得るものを明らかにする。
- 主要評価項目
- 全生存期間
- 副次的評価項目
- 無増悪生存期間(再発を含む)
- 探索的評価項目
- 肝転移外科治療後の予後因子
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-004
再発危険因子を有するStageⅡ結腸癌に対するUFT/Leucovorin療法の臨床的有用性に関する研究-JFMC46-1201- - 申請の概要
-
医療行為は対象患者に手術単独UFT/UZEL療法、あるいはランダム化割付けによる手術単独、UFT/UZEL療法を選択してもらい、主要評価項目を無病生存期間、副次評価項目を生存期間、有害事象、術後4時間以降のCEAmRNAと予後との関連として研究を行う。
医学研究の目的は再発危険因子を有するStageⅡ大腸癌に対して日本で最も繁用されている標準治療regimenである経口UFT/Leucovorin療法の臨床的有用性を検討する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-005
HER2過剰発現の治癒切除不能な進行・再発胃癌に対してトラスツズマブを含む併用化学療法を行った症例の治療成績の観察研究(KSCC1302) - 申請の概要
-
HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃癌に対し、トラスツズマブを含む併用化学療法を施行した症例のデータを収集し、トラスツズマブ併用化学療法の安全性と有効性等について検討する。
評価項目
- 安全性(有害事象の発現頻度と程度)
- Infusion reactionの発現頻度と程度および実施された処置
- 心毒性の発現頻度と程度および実施された治療と転帰
- 治療ライン、治療レジメン、奏効割合、無増悪生存期間、
- TFS(Time to Failure of Strategy)、治療成功期間、全生存期間
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
2013(平成25)年度 第2回委員会審議
平成25年6月13日
- 申請者
- 泌尿器科部長
田崎 義久 - 申請課題
- 2013-006
ドセタキセル化学療法中、または治療終了後に進行した前立腺がん患者の治療実態調査(PROXIMA) - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
- 項目変更
- 実施期間
-
2012年1月から2015年4月
↓
2012年1月から2015年7月 - 予定症例数
-
150例
↓
100例
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-007
KRAS野生型の大腸癌肝限局転移に対するmFOLFOX6+ベバシズマブ療法とmFOLFOX6+セツキシマブ療法のランダム化第Ⅱ相臨床試験 - 申請の概要
-
KRAS野生型の大腸癌肝限局転移(H2またはH3)を有する患者に対して、mFOLFOX6+ベバシズマブ療法、またはmFOLFOX6+セツキシマブ療法を行い、8コースの治療が終了後に肝切除が可能であれば肝切除を行う。肝切除が不可能な場合は、PDになるまで同じ治療を継続する。
医学研究の目的はKRAS野生型の大腸癌肝限局転移を対象にmFOLFOX6+ベバシズマブ療法、もしくはmFOLFOX6+セツキシマブ療法を施行し、有効性および安全性を検討する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-008
StageⅢの治癒切除胃癌に対する術後補助化学療法としてのTS-1+Docetaxel併用療法とTS-1単独療法のランダム化比較第Ⅲ相試験(JACCRO GC-07(START-2)) - 申請の概要
- StageⅢの治癒切除胃癌を対象に、術後補助化学療法としてTS-1+Docetaxel併用療法とTS-1単独療法を無作為に割り付けて行い、TS-1+Docetaxel併用療法のTS-1単独療法に対する優越性を検証する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 皮膚科医師
後藤 真由子 - 申請課題
- 2013-009
RI法を用いたセンチネルリンパ節生検の悪性黒色腫以外の皮膚癌に対する保険適応外の使用 - 申請の概要
-
センチネルリンパ節(Sentinel lymph node:SLN)とは、ある腫瘍原発巣に対しての所属リンパ節群の中で、腫瘍から直接最初にリンパ行性転移の腫瘍細胞が流入する一つないし複数個のリンパ節を指す。癌のリンパ行性転移は、まずSLNに生じ、その後、それに続く二次リンパ節へと転移が生じていくため、SLNに転移がなければ所属リンパ節群のその他のリンパ節に転移が生じないというSentinel node conceptに基づき、センチネルリンパ節生検(Sentinel lymph node biopsy:SLNB)が広く実施されるようになった。
SLNBはSLNを固定し、その転移の有無を検索することにより、正確な病期分類を可能とし、治療法の選択や予後の予測に反映できる。また、組織学的に転移が陰性であれば、従来予防的に実施されていた郭清術を回避でき、より手術侵襲や術後の合併症、入院期間や費用面で優れた効果をもたらすものである。
SLNBを実施することにより、より正確にリンパ節転移の有無が確認できるため、術式の選択、患者の負担の軽減、予後の改善が期待される。
SLNBは皮膚癌領域において、国内では悪性黒色腫のみに保険適応がある。それ以外の皮膚癌においても広く実施され、有用性が示されているが、SLNBが予後を改善するというエビデンスが得られていない。当院でもSLNBの症例を積み重ねてエビデンスの確立に寄与したい。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
2013(平成25)年度 第3回委員会審議
平成25年7月29日
- 申請者
- 眼科医長
今木 裕幸 - 申請課題
- 2013-010
ブリリアントブルーGの臨床使用について - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
- 眼科内眼手術(硝子体手術、白内障手術)において視認性向上のための組織染色は非常に重要であり、手術予後を左右する。過去使用されてきた網膜毒性報告のあるインドシアニングリーン(ICG)に替わる手術アジュバント(眼内生体染色液)として近年繁用されているブリリアントブルーGを用い手術治療を行い安全性を確保する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 消化器外科医長
松本 敏文 - 申請課題
-
2013-011
局所進行直腸癌に対する術前化学療法の感受性予測システムに関する研究―生検組織および切除標本検体のマイクロアレイ解析― 局所進行直腸癌に対するSOX-bevacizumab併用療法またはSOX-cetuximab併用療法による術前化学療法の有効性および安全性の検討(主研究)の付随研究 - 申請の概要
-
治癒切除可能大腸癌の治療法は外科手術が第一選択となる。本邦では骨盤自立神経温存側方骨盤リンパ節郭清が普及しているが、予防的側方リンパ節郭清の意義は証明されていない。欧米では腫瘍の縮小効果が高いことや術後照射に比べて毒性が少ない等の利点から術前放射線療法について多くの検討が行われその有用性が示された。術前放射線療法のメリットとして良好な局所制御率が挙げられるがデメリットも報告されている。とくに術前に放射線療法を施行することによる晩期障害として、排便や排尿、性機能における障害が挙げられる。そこで近年の分子標的薬を用いた強力な化学療法でも高い抗腫瘍効果が示されており、術前放射線療法と同等の局所制御が得られる可能性がある。しかしながら、術前化学療法の大きな問題点として、化学療法に対する感受性が個々の患者によって異なることである。化学療法により効果が期待できる症例を選別して治療が行うことができればオーダーメイドな治療方針の決定に役立つものとなる。
本研究は、化学療法感受性に関する遺伝子と有害事象発生に関与する遺伝子多型を解析し、遺伝子要因を検出する技術の開発も目的とする多施設共同研究である。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 放射線科医師
轟木 渉 - 申請課題
- 2013-012
Case report(もしくはLetter to editor)の投稿の承認 - 申請の概要
- 右肝動脈近位からの狭細な分枝をfeederとするHCCがあり、通常のマイクロカテーテルの選択的挿入が困難であったため、新しく開発されたマイクロバルーンカテーテル(マイクロサイト、通常のマイクロバルーンカテーテルと違い、バルーンで閉塞した部分の近位側に薬剤を注入することのできるもの)を用い、feederの遠位側をバルーンで閉塞し、右肝動脈の潅流領域を温存した上でバルーンの近位にある側溝より薬剤を注入し、腫瘍への良好な治療効果を得た症例。新しいdeviceの紹介も兼ね、Case reportもしくはLetter to editorとして投稿を行ったところ、Reviewerより倫理委員会の承認を得てくださいとのことでした。とくに通常のマイクロバルーンカテーテルとくらべ、合併症(バルーンによる血管損傷)が多い、もしくは異なる合併症がおこるなどの報告は今のところありません。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
2013(平成25)年度 第4回委員会審議
平成25年8月21日
- 申請者
- 脳神経外科医師
阿南 光洋 - 申請課題
- 2013-013
Anatomical characteristics of posterior communicating artery aneurysms causing third nerve palsy - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
-
くも膜下出血は、一旦生じると約半数の患者が死亡すると言われている重篤な疾患である。動脈瘤の多くは数ミリ径で無症候性であるが、動眼神経に近接する後交通動脈分岐部瘤の場合には、増大した動脈瘤により動眼神経が圧迫されて動眼神経麻痺として発症するものもあり、破裂予防として緊急手術の対象となる。
一般的に、動脈瘤の圧迫による動眼神経麻痺は瞳孔拡大を伴い、瞳孔拡大を伴わない場合には糖尿病や高血圧による動眼神経の微小循環障害として認識されているが、今回我々は、瞳孔拡大を伴わない動眼神経麻痺にて発症した後交通動脈分岐部瘤を連続3例経験した。術中所見として動眼神経の圧迫方向が特徴的であり、文献的考察を加えて本論文とした。更に、動脈瘤の母血管である内頚動脈と動眼神経との距離についての既報は無く、当科を含めた多施設5年分の症例を後方視的にまとめ、動眼神経麻痺の有無によるグループ群間の比較を行う事で、解剖学的な特徴を得た。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
2013(平成25)年度 第5回委員会審議
平成25年11月26日
- 申請者
- 製剤主任
鳥山 陽子 - 申請課題
- 2013-014
軽度催吐性リスクのがん化学療法に伴う悪心・嘔吐の観察研究 - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
- 現在、がん化学療法の制吐療法については、国内外のガイドラインが発表されている。催吐リスク別の分類において、軽度催吐リスクの化学療法に対する制吐療法についてはデキサメタゾン単剤が推奨されているが、質の高いエビデンスとなる研究が行われていないことから、専門家のコンセンサスにより策定されておりエビデンスに乏しい。実際、欧米においてガイドラインの遵守率は30%程度であり、多くの施設で過剰処方と考えられる5HT3受容体拮抗薬が習慣的に用いられていると報告されている。また、九州地区の国立病院機構の施設において事前アンケートを行ったところ、約50%の施設でガイドライン推奨のデキサメタゾン単剤ではなく、5HT3受容体拮抗薬が用いられていることが判明した。5HT3受容体拮抗薬は高価な薬剤であり、過剰処方は医療経済や副作用のリスクの面で問題である。本研究では、軽度催吐性抗悪性腫瘍薬投与に起因する急性及び遅発性の消化器症状(悪心・嘔吐、食欲不振)の発現状況、及び制吐療法の実態を調査する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 血管外科医師
久米 正純 - 申請課題
- 2013-015
下肢虚血疾患登録(疾患レジストリ)による多施設共同研究システムの構築 - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
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本研究は、被験者のカルテよりデータを抽出するため直接的な医療行為は一切行わない。
本研究の目的は、下肢慢性動脈閉塞症(peripheral arterial disease: PAD)に関する症例登録データベース(通称:Q-PAD)により、臨床情報を共有・解析することでPADの症状・治療を体系的に把握し良質な治療を実現することである。我が国におけるPAD症例は欧米と比較して少ないため、単一施設では症例数の蓄積に限界があり、正確な実態把握ができない可能性がある。そのため、九州大学第二外科血管グループの医師が所属する九州大学病院および関連施設における多施設共同システムを構築し、後向き解析による論文作成ツールの構築、前向き臨床研究へ向けた基盤整備、将来の国際共同治験への素地を確立する。
厚生労働省の臨床研究・治験活性化に関する検討会では、臨床研究を円滑に進めるための機能的なネットワーク構築の必要を述べており、重症虚血肢については全国規模のレジストリ構築が進められている。しかしながら、早期発見・早期治療が必要とされる下肢虚血疾患全体のレジストリ構築はなされておらず、進行疾患であり、両下肢の外科的手術という複雑なデータに対応するためには、リアルタイムに更新できる使いやすいシステムの構築が必要である。本学における多施設共同研究システム構築は、治験被験者リクルートおよび各種データの集約、開存率や生命予後、合併症発生率、術後遠隔成績などの解析に対応し、治験・臨床研究を加速させPAD研究の促進に貢献する。従って、今後はPADに関する症例登録データベースの構築は医療の質を向上するとともに患者にとって有益なシステムであることから、本研究の社会的意義は大きい。
本研究における患者登録は、九州大学病院および関連施設にて行う、入力は九州大学と契約した人材派遣会社の職員が実施する。また、本システム運用管理(ユーザー登録等)は、九州大学革新的バイオ医薬創成学講座レジストリ事務局・コラボレーションⅡ-601で実施する。なお、本研究は、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の承認(許可番号:25-174)を受けている。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 放射線科部長
宮嶋 公貴 - 申請課題
- 2013-016
肝細胞癌に対するマイクロバルーン閉塞下TACEの治療成績に関する後視法的検討 - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
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肝細胞癌の大部分は動脈血で栄養されているため、切除不能、経皮的治療困難の肝細胞癌に対しては、動注化学塞栓療法(TACE)が、施行されてきた。2000年代になり2編のRCT論文とメタアナリスでLip-TACE/TAEは切除不能肝細胞癌の予後向上に寄与することが証明された(1,2)。さらに、2012年に第10回日本臨床腫瘍学会で国立がん研究センター東病院より、切除不能肝細胞癌に対するアントラサイクリン系抗がん剤を使用した肝動脈化学塞栓療法(TACE)の日韓共同の前向き臨床試験の結果から、modified RECISTによる有効性評価の結果は、完全奏効42%、部分奏効31%、病勢安定17%で、奏効率は73%、進行までの期間は7.8カ月、全生存期間中央値は3.1年、1年生存率89.6%、2年生存率75.0%だった。日本と韓国の間で生存率に有意な差はなかった。2年生存率は75%という成績が得られたことが明らかになった結果から、TACEは切除不能肝細胞癌に対する標準治療と見なしうると報告された。科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムでは肝障害度AもしくはBで3cmを超えた2~3個の肝細胞癌および4個以上の多発肝細胞癌がTACE/TAEの適応となっている。
当院でも、肝細胞癌に対して、基本的に科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムに沿った適応で、切除不能肝細胞癌に対してTACEが施行されている。
近年、選択的TACEで使用されている、マイクロカテーテルの先端に、バルーンを有する一時的な血管閉塞に用いるオクリュージョンマイクロバルーンカテーテルが市販された。本オクリュージョンマイクロバルーンカテーテルによる一時的な肝血流遮断状態では、肝臓内の血流動態の変化を利用して、より効果的な抗がん剤や塞栓物質の注入が可能なmicroballoon-occluded transarterial chemoembolization(B-TACE)が施行されつつある。B-TACEにより、肝細胞癌に対して、良好なLipiodolの沈着が得られるとの報告があり、これにより、良好な局所治療効果が予測されている[3,4,5]。しかしながら、その治療効果や有害事象に関する報告は、我々の検索した範囲では、認められない。
本研究では、切除不能肝細胞癌の治療成績向上のために、切除不能肝細胞癌症例を対象に、マイクロバルーンカテーテルを使用した肝動脈閉塞下の動注化学塞栓療法(B-TACE)の安全性と有効性を後視法的に観察研究することを目的としている。
また、本治療法を施行した患者様の治療経過や有効性に関する臨床研究の審査もお願い申し上げます。研究における倫理的配慮は、個人情報の取り扱いには、十分に配慮いたします。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 精神科医長
後藤 慎二郎 - 申請課題
- 2013-017
統合失調症患者のドパミン過感受性精神病に対するアリピプラゾールの有効性に関するオープン試験 - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
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統合失調症患者のドパミン過感受性精神病に対するアリピプラゾールの有効性に関するオープン試験
抗精神病薬による治療によって、十分な改善を示さない統合失調症患者は約50%に上ることが言われており、一旦寛解状態に至っても、5年で約80%の患者が再発する。このような精神病症状の持続や不安定性にドパミン過感受性状態(Dopamine Supersensitivity Psychosis: DSP)の関与が指摘されている。この状態は高力価・高用量の抗精神病薬治療によって惹起され、ドパミンD2受容体のアップレギュレートが関与しているものと強く推定されている。DSPは臨床的には離脱精神病や薬剤耐性の持続精神病にて観察されるが、現在のところ有効な解決法は存在しない。
アリピプラゾールは臨床で使用できる唯一のドパミン部分作動薬であるが、安定した外来患者への治療によって、他剤に比して再発が少ないことが報告されている。一方で同薬への不用意な切り替えはしばしば陽性症状の悪化を引き起こすことも知られている。これらは共にDSPに関係した現象と推測されており、すなわち前者はアリピプラゾールがDSPを形成しない薬剤であること、また後者はDSPの状態下にある患者にはアリピプラゾールが刺激し得ることを示唆している。
そこで、今回DSPの状態にある統合失調症患者に対して、ごく少量の同薬を上乗せし、緩徐な切り替えを行うことで、DSP状態が安定化されることを検証することを目的とした、臨床試験を行いたい。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
2013(平成25)年度 第6回委員会審議
平成25年12月24日
- 申請者
- リウマチ科医長
末永 康夫 - 申請課題
- 2013-018
関節リウマチにおける薬剤性肺障害発症に関わる遺伝子の探索 - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
-
関節リウマチ(RA)には時に重篤な合併症として間質性肺病変(ILD)の発症をみることがある。また、その一部は薬剤誘発性である。本研究は、一塩基多型解析法を用いて間質性肺病変などの合併症を含むRAの病態や薬剤性肺障害などの有害事象を含む薬剤応答性に関わる遺伝的素因を探索することにより、抗リウマチ薬の選択基準の作成に寄与するとともに患者生命予後の改善を図ることを目的としている。
RA患者を対象に末梢血を採取し遺伝子解析を施行する。同時にその臨床情報を収集し、その関連を解析する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 看護師長
藤井 栄 - 申請課題
- 2013-019
ICUにおける患者が体験した不眠の様相に関するインタビュー調査研究 - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
-
ICU患者にICU症候群が問題となることは多方面から研究され、その症状のひとつとしてせん妄が注目され、早期発見と適切な対処のためにせん妄研究が数々行われている。ICU症候群の発生率はICU入室患者の10~20%と言われ、せん妄発生要因などが調査されているが、その発生率は以前として減少しておらず、発症時の対処も対症療法が中心である。
ICU症候群の前駆症状として「不眠」はしばしば出現し、その不眠の原因は、疾患による症状や治療の影響、予後への不安や慣れない環境、挿入されたチューブ類による拘束感、疼痛などであると言われている。また、ICU症候群は不眠が24時間以上持続した後、2~3日目に発症することが多いことがわかっている。
日々、看護していく中で、我々の観察において適度に睡眠していたと思われた患者から「夢か現実かわからないような夢ばかり見ていた。眠れなかった。」と不眠を訴える場合もあるが、反面、警報や医療機器の音などに敏感に反応して開眼し、覚醒していたにも関わらずそれらの記憶がなく、自分自身に睡眠障害が起きていたことを記憶していない患者がいることも体験している。実際の看護では、患者の不眠の観察として、睡眠時間、中途覚醒や熟睡感などを把握して対処していることが多く、患者が体験した夢を含めた不眠の内容まで聴いて検討することはしていない。また、不眠を自覚しない睡眠障害のある患者に対し、看護師としてどのように対処すべきかわからず、とまどっているという現実がある。
不眠に対する患者の自覚の有無に関わらず、ICU患者の「不眠」を検討することはICU看護において重要であるが、先行研究において不眠に対する患者の思いや体験に焦点をあてたものは少ない。本研究は、ICU患者を対象に不眠に関する調査を行い、インタビューを通して対象者の思いや体験を知り、不眠に対する看護を検討することを目的とする。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
2013(平成25)年度 第7回委員会審議
平成26年1月29日
- 申請者
- がん化学療法看護認定看護師
吉村 幸永 - 申請課題
- 2013-020
がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査 - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
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2003年に厚生労働省の研究グループ(研究代表者、静岡県立静岡がんセンター山口建)は、全国の医療機関53施設、患者団体15団体が参加した大規模ながん体験者の悩みや負担等に関する実態調査を実施した。また、悩みデータを「静岡分類」で体系化し、データベース構築後、インターネットで公開した。調査から10年後の現在、がん対策や患者家族支援がすすめられるなかで、現在のがん体験者の悩みや負担の実態を明らかにするために、以下を目的に全国規模の実態調査を実施する。
- がん体験者の悩みや負担を明らかにする。
- 悩みの分類法である「静岡分類」にそって分析する。
- 2003年に実施された悩みの全国実態調査結果と比較して、悩みや負担の変化を明らかにする。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 消化器外科医長
松本 敏文 - 申請課題
- 2013-021
局所進行直腸癌に対するTS-1を用いた術前化学放射線療法の感受性予測システムの有用性の検討-多施設共同第Ⅱ相臨床試験-~OITA-trialⅢ~ - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
- 局所進行直腸癌を対象にTS-1を用いた術前化学放射線療法に対する感受性をOITA-RC-Chipにより予測しうるか検討する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
2013(平成25)年度 第8回委員会審議
平成26年2月25日
- 申請者
- 外科医師
廣重 彰二 - 申請課題
- 2013-022
膵癌切除症例に対する術後補助化学療法としてのS-1療法の至適投与期間に関するランダム化第Ⅱ相試験 - 申請の概要
-
- 医療行為及び医学研究の目的
-
【背景】膵癌切除後の補助化学療法に関しては、2013年のASCO-GIにおいて、ジェムシタビン(6ヶ月)とS-1(6ヶ月)を比較した第Ⅲ相比較試験であるJASPAC01試験の結果が報告され、S-1の有意性が示された。その結果を持って、膵癌診療ガイドラインも、術後補助化学療法のレジメンとしてS-1単独療法(術後6ヶ月)がグレードAで推奨される予定である。一方、胃癌術後の補助化学療法としては、2006年のACTS-GCの結果からS-1の12ヶ月投与が標準治療となっている。
【目的】膵癌切除症例に対する術後補助化学療法としてのS-1療法(12ヶ月投与法)の有効性と安全性を6ヶ月投与法と評価・比較し、より有望な治療法を選択する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-023
根治切除可能な進行直腸癌に対する術前化学療法としてのSOX療法とmFOLFOX6療法の有用性の検討 -ランダム化第Ⅱ相臨床試験-(KSCC1301) - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
- 進行直腸癌症例に対するSOX療法またはmFOLFOX6療法を用いた術前化学療法を行い、その有効性と安全性を評価・比較し、より有望な治療法を選択することを目的とする。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-024
KSCC1302付随研究 胃癌肝転移巣のC5a受容体発現に関する免疫・組織学的検討 - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
- 多施設による胃癌肝限局性転移の外科治療が施行された症例の後ろ向きコホート研究であり、実施される医療行為はない。臨床情報は既にKSCC1302本体研究で収集されている。胃癌肝転移巣におけるC5a受容体発現を病理組織学的に比較検討して、臨床所見および予後との因果関係を探索することが目的である。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 外科医長
折田 博之 - 申請課題
- 2013-025
StageⅢ結腸癌に対する術後補助化学療法としてのS-1 + Oxaliplatin(C-SOX)療法の効果・安全性確認試験(KSCC1303) - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
- 病理学的StageⅢ結腸癌に対する術後補助化学療法としてのC-SOX療法の有効性および安全性について検討する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。
- 申請者
- 消化器内科医長
良永 雅弘 - 申請課題
- 2013-028
抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡に関した偶発症の全国調査 - 申請の概要
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- 医療行為及び医学研究の目的
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日本消化器内視鏡学会は「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」を作成し、平成24年7月に発表した。本ガイドラインは抗血栓薬(抗凝固薬・抗血小板薬)の休薬による消化器内視鏡後の消化管出血だけでなく、血栓塞栓症の誘発にも配慮して、抗血栓薬の休薬期間、方法などについて新たに提示している。しかし、ステートメントに関してエビデンスレベルが低いものが多くを占めていることや、日本人に対するエビデンスが少ないことが指摘されている。
そこで、本研究では日本消化器内視鏡学会医療安全委員会が主導して、各分担施設において、抗血栓薬を使用している患者に対する内視鏡検査・治療の症例登録をprospectiveに行い、抗血栓薬服用者における偶発症を解析することにより「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」の有用性を検証する。
- 判定
- 承認
本報告は全員一致で承認された。