退院後生物学的製剤投与と感染症による再入院との関連性:生物学的製剤投与中に感染症で入院が必要だった関節リウマチ患者の後ろ向きコホート

はじめに
関節リウマチは免疫の異常によって関節で慢性的に炎症が起こり、関節が徐々に破壊される自己免疫疾患です。本邦での有病は0.3-1.5%、推定国内患者数は50~100万人と言われており、比較的患者さんの多い疾患とされています。治療によって関節での炎症を抑えることで、関節の破壊が予防できることが分かっており、最近でも治療法は進歩し続けています。
最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品を生物学的製剤と呼びますが、2003年から炎症の伝達物質であるサイトカインや免疫細胞を阻害する生物学的製剤が関節リウマチに対して保険適応となりました。生物学的製剤は有効性が高く、現在では関節リウマチの患者さんの2-3割に使用される一般的な治療となりつつあります。
その一方で、生物学的製剤の副作用として重症感染症にかかりやすくなることが知られており、一定の割合で感染症での入院が必要となる患者さんがいらっしゃいます。その際に、感染症治癒後に生物学的製剤を継続するかどうかを相談しなくてはなりませんが、感染症入院後の経過についての研究はほとんど行われていません。
今回、私たちは関節リウマチに対して生物学的製剤を投与中に入院が必要な感染症を起こした患者さんにおいて、その後の経過を調べて統計学的に解析することにより、より適した治療法の可能性を探ります。
研究内容
研究参加施設の診療録を利用して、感染症入院の直前6ヵ月から退院後18ヵ月までの情報を取得します。感染症で2回目の入院が必要だった患者さんの割合を調べるとともに、その期間中に感染症入院を起こした患者さんと起こさなかった患者さんの背景を比較し、どのような患者さんで感染症の再発を起こしやすかったかを検討します。
この研究は過去の診療情報を利用して行うため、患者さんに余分な負担が生じることはありません。
取得する情報は以下の通りです。
- Ⅰ. 入院前の情報
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- 入院直前(6ヵ月以内)のDAS28-ESR/CRP、血沈、Alb、Cr、CRP
- 同じ生物学的製剤の開始時もしくは使用中の前回の感染症入院の退院日からの日数
- Ⅱ. 入院中の情報
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- 入院の契機となった感染症の種類
- 入院日数
- Ⅲ. 退院時の情報
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- 年齢
- 性別
- 体重
- 関節リウマチの病期: Steinbrocker分類でのStage, Class
- 肺疾患・糖尿病・喫煙の有無
- 内服薬の種類・投与量
- Ⅳ. 退院後の経過についての情報
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- 退院日から18ヵ月までの生物学的製剤の投与状況、感染症入院の有無
対象
研究参加施設において2008年9月1日から2014年5月31日までに関節リウマチに対して生物学的製剤を投与中に入院を要する感染症を発症し、退院された方、約400名を対象とします。
対象者となることを希望されない方は、下記連絡先までご連絡下さい。
個人情報の管理について
個人情報漏洩を防ぐため、九州大学病院免疫・血液・代謝内科においては、個人を特定できる情報を削除し、データの数字化、データファイルの暗号化などの厳格な対策を取り、第三者が個人情報を閲覧することができないようにしております。
また、本研究の実施過程及びその結果の公表(学会や論文等)の際には、患者さんを特定できる情報は一切含まれません。
研究期間
研究を行う期間は承認日より2017年3月31日まで。
倫理的事項
本研究は各研究機関の長の許可や倫理審査委員会の承認を受けて行っています。九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会:許可番号:27-317。
医学上の貢献
本研究により被験者となった患者さんが直接受けることができる利益はありませんが、術前CRP値の臨床病理学因子および予後との相関を明らかにすることで乳癌症例における術前CRPの予後予測因子としての意義が明らかとなり、より詳細な予後予測が可能となることで、多くの乳癌患者さんの治療と健康に貢献できる可能性が高いと考えます。
研究に関する問い合わせ
対象となる患者さんご本人等が希望される場合には、研究計画書及び研究の方法に関する資料につきまして閲覧することが可能です。また、個人情報の開示のご希望がございましたら、保有する個人情報のうちご本人に関するものについての開示も行います。希望される方は、下記連絡先までご連絡下さい。
研究機関
九州大学院別府病院 免疫・血液・代謝内科
- 教授
- 堀内 孝彦(責任者)
- 助教
- 木本 泰孝
- 医員
- 柏戸 佑介
〒874-0838
大分県別府市大字鶴見字鶴見原4546
Tel: 0977-27-1640
FAX: 0977-27-1641
担当: 木本 泰孝
(お問い合わせはFaxまたは郵送でお願い致します。また、氏名及び診察券に記載されているカルテ番号を必ず記載されてください。)
付記
この研究は、以下の施設で実施される共同研究です。
- 九州大学病院別府病院
- 代表幹事 堀内 孝彦
- 九州大学病院
- 代表者 塚本 浩
- 浜の町病院
- 代表者 吉澤 誠司
- 北九州医療センター
- 代表者 西坂 浩明
- 広島赤十字・原爆病院
- 代表者 澤部 琢也
- 飯塚病院
- 代表者 永野 修司
- 松山赤十字病院
- 代表者 押領司 健介