呼吸器外科

診療案内
診療対象疾患
- 肺・気管支
- 肺がん・肺腫瘍、転移性腫瘍、気胸、気管支腫瘍、嚢胞性疾患、肺分画症
- 縦隔
- 胸腺腫瘍、神経性腫瘍、胚細胞性腫瘍、嚢胞性疾患
- 胸壁/胸膜疾患
- 胸壁腫瘍、胸膜中皮腫、膿胸
- 胸部外傷
- 肋骨骨折、気胸、血胸、肺・気管支損傷
- 横隔膜疾患
- 横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症
呼吸器外科は、肺、縦隔、胸壁などに関連した胸部疾患に対する外科的治療を行っております。また、周術期や再発期進行肺癌、縦隔腫瘍、悪性胸膜中皮腫などの化学療法も行っています。
手術は呼吸器外科専門医によって、化学療法は薬物療法専門医の指導のもとに施行されます。放射線治療は放射線科の治療専門医によってなされますが、主治医は呼吸器外科の医師が担当しています。個々の患者さんの治療法は院内カンファレンスによって決定され、チーム医療を心がけています。
呼吸器外科においては、鏡視下手術を柱とした低侵襲手術(体に優しい手術)が普及しました。現在、当科ではロボット手術も取り入れ、安全で確実な低侵襲手術を行っています。低侵襲で、がんの根治性を損なわない治療が重要と考えています。
診療内容
1. 肺がんの手術に関して
- 非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど)の早期がん(ステージ1〜3)に対して手術を行います。
- 低侵襲手術(体に優しい手術):①手術創を小さくして、疼痛軽減や整容性の改善を図る手術、②健常肺を温存して呼吸機能を温存する手術に大別されます。
- ステージ2〜3の場合は、術前化学療法や放射線治療を行った後に、手術を行うこともあります。
① 手術創を小さくする低侵襲手術
呼吸器外科における胸腔鏡下手術には、アプローチ法により以下の4種類に大別されます(図1)。これらのアプローチ法を使い分けることにより、幅広く低侵襲手術が提供できると考えております。
- 多孔式胸腔鏡下手術
- 3cmの創1カ所と1cmのポート孔1-3カ所を用いた完全鏡視下手術により、肺葉切除、肺区域切除、縦隔腫瘍切除、胸腺摘出術などの標準的な呼吸器外科手術を行っています。
- 単孔式胸腔鏡下手術
- 4cm程度の創1カ所のみを通して、カメラと複数の鉗子を使用して肺葉切除や区域切除、部分切除などを行います。主に早期肺癌や転移性腫瘍などに対して行っています。
- ロボット支援下手術
- 上述の多孔式胸腔鏡下手術を、ダヴィンチTM(手術支援用ロボット)を用いて行う手術法です。3cmの創1カ所と0.8cmのダヴィンチ用ポート4カ所を用いた鏡視下手術により、肺葉切除、肺区域切除、縦隔腫瘍切除、胸腺摘出術などの標準的な呼吸器外科手術を行います。
- 胸腔鏡補助下手術
- 8cm程度の創と1cmのポート孔1-2カ所を用いて、肺葉切除や区域切除、部分切除などを行います。ある程度複雑な手術にも対応可能です。


② 臓器機能温存を図る低侵襲手術
- 完全胸腔鏡下肺区域切除術(図2)
- 2cm以下の小型肺がんの場合は、従来よりも切り取る肺の範囲を小さくして、肺の機能の温存をめざします。当科では区域切除を完全胸腔鏡下手術で行います。
- 局所進行肺がんに対する肺機能温存(低侵襲)手術について(図3)
- 肺がんが増大してしまった場合は、片肺全摘術など、切り取る肺の範囲が増えます。このような場合は、術前治療で腫瘍を縮小させた後に手術を行います。腫瘍部位を切り取った後、血管や気管支をつなぎ合わせる(形成術)ことにより健常肺をなるべく温存するように心がけています。

2. 肺癌の薬物療法に関して
- 肺がんの薬物療法においては近年に新薬が次々に承認されました。非小細胞肺がんは、EGFR、ALK、ROS1、RET、MET、KRAS、BRAF、NTRK、HER2など 重要な遺伝子変異が多数判明しており、このような遺伝子変異を標的とした分子標的薬が多数使用可能です。
- 免疫療法治療薬である免疫チェックポイント阻害薬(PD-1/L1抗体、CTLA4抗体)は、効果が長く続くことが期待されています。
- 当科では、肺がんの遺伝子検査を積極的に活用することで、患者さん一人一人に最善・最新の治療法を選択するよう心がけています。

3. 縦隔腫瘍に関して
縦隔(じゅうかく)とは、右と左の肺に挟まれた胸の真ん中で、心臓・大血管や気管・食道がある場所です。縦隔に発生した腫瘍を「縦隔腫瘍」と呼びます。縦隔腫瘍には、胸腺上皮性腫瘍、先天性嚢胞、神経原性腫瘍、胚細胞腫瘍、リンパ腫などが含まれます。
- 胸腺上皮性腫瘍
- 胸腺腫や胸腺がんなどに対して、胸腔鏡下手術を行います。進行癌については、開胸手術を行います。
- 先天性嚢胞
- 胸腺嚢胞、心膜嚢胞、気管支嚢胞などが含まれます。良性の腫瘍であり、胸腔鏡下手術を行います。
- 神経原性腫瘍
- 胸の中を通る神経から発生する腫瘍で、胸壁や椎体(背骨)の周辺にできやすい特徴があります。多くの場合は良性の腫瘍であり、サイズが小さい場合は胸腔鏡下手術を行います。
- 胚細胞腫瘍
- 良性の奇形腫と、悪性胚細胞腫瘍に分類されます。悪性胚細胞腫瘍に対しては、化学療法を行った後に、残存する腫瘍に手術を行います。
- リンパ腫
- 悪性リンパ腫は、診断のための生検(手術を含む)を行い、化学療法などを行います。MALTリンパ腫には手術を行うこともあります。
4. 胸膜中皮腫に関して
過去のアスベスト吸入が原因の一つと考えられている腫瘍です。正確な診断のために手術による胸膜生検を行います。化学療法が治療の基本となりますが、早期(ステージ1〜2)の場合は化学療法後に手術を行うこともあります。
5. ロボット手術に関して
ロボット支援下手術のメリットとして、
- 手術器具(鉗子)の関節の自由度が高く、体腔内で人間の手のように動かすことができる。
- 手ぶれがなく、正確かつ微細な操作が可能である。
- 高解像度の3D画像を通し手術部位を鮮明に視認できる。
当院では、ダヴィンチXiシステム(図5)によるロボット手術により、安全で確実な手術を行っています。

診療実績
2021年~2024年
疾患 | 術式 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
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原発性肺腫瘍(良性) | 葉切除 | 1 | |||
区域切除術 | |||||
部分切除 | 1 | 3 | 2 | 5 | |
その他 | |||||
原発性肺腫瘍(悪性) | 全摘術(開胸) | ||||
全摘術(鏡視下) | |||||
葉切除術(開胸) | 1 | ||||
葉切除術(鏡視下) | |||||
葉切除術(完全鏡視下) | 32 | 28 | 28 | 11 | |
葉切除術(ロボット支援下) | 12 | ||||
葉切除術+形成術 | 1 | ||||
葉切除術+合併切除術 | 1 | 1 | |||
区域切除術(開胸) | |||||
区域切除術(鏡視下) | 2 | 1 | |||
区域切除術(完全鏡視下) | 4 | 17 | 19 | ||
区域切除術(ロボット支援下) | 2 | ||||
部分切除術(開胸) | 1 | ||||
部分切除術(鏡視下) | 6 | 7 | 14 | 13 | |
その他 | 2 | 2 | 3 | 3 | |
転移性肺腫瘍 | 全摘術(開胸) | ||||
全摘術(鏡視下) | |||||
葉切除術(開胸) | |||||
葉切除術(鏡視下) | 1 | ||||
葉切除術(ロボット支援下) | |||||
葉切除術+形成術 | |||||
葉切除術+合併切除術 | |||||
区域切除術(開胸) | |||||
区域切除術(鏡視下) | 1 | 1 | |||
区域切除術(ロボット支援下) | 1 | ||||
部分切除術(開胸) | |||||
部分切除術(鏡視下) | 4 | 1 | 9 | 7 | |
その他 | |||||
縦隔腫瘍 | 摘出術 | 1 | 1 | ||
摘出術+合併切除術 | 1 | 2 | |||
摘出術(鏡視下) | 8 | 7 | |||
摘出術(ロボット支援下) | 4 | ||||
その他 | 1 | 3 | 4 | 3 | |
胸壁・胸膜腫瘍 | 胸膜外肺全摘術 | ||||
胸膜剥皮術 | |||||
胸壁切除・再建術 | 1 | ||||
その他 | 1 | 1 | 7 | ||
膿胸・感染性疾患 | 肺葉切除以上 | ||||
区域/部分切除術 | 1 | 1 | 1 | ||
ドレナージ術 | 1 | ||||
胸郭形成術 | |||||
開窓術 | |||||
縦隔炎手術 | |||||
胸腔掻把術 | 3 | 7 | 3 | ||
その他 | 1 | ||||
気胸 | ブラ切除・縫縮術(開胸) | ||||
ブラ切除・縫縮術(鏡視下) | 3 | 5 | 10 | 15 | |
その他 | 2 | ||||
その他 | 1 | 1 | |||
計 | 59 | 60 | 109 | 121 |
スタッフ紹介
岡本 龍郎
- 専門領域
- 呼吸器外科
- 専門性資格
-
- 日本外科学会認定外科専門医・指導医
- 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
- 呼吸器外科専門医合同委員会認定呼吸器外科専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医
- 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医
- 日本がん治療認定医機構認定がん治療認定医
- 日本呼吸器外科学会認定胸腔鏡安全技術認定医
- da Vinci console surgeon
福山 誠一
- 専門領域
- 呼吸器外科
- 専門性資格
-
- 日本外科学会認定外科専門医
- 呼吸器外科専門医合同委員会認定呼吸器外科専門医
- 日本がん治療認定医機構認定がん治療認定医
- 難病指定医