〒874-0011 大分県別府市大字内竈(かまど)1473番地
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臨床研究部

臨床研究部長挨拶

臨床研究部長
川中 博文

医薬品の治験に関しては平成9年よりGCP(Good ClinicalPractice)省令が施行されたことにより治験の倫理性および科学性は大きく向上しました。しかし、その一方で医療機関の実施体制が当時は十分でなく治験実施件数は減少することになりました。そのような状況を改善するため、文部科学省と厚生労働省の共同のもと平成15年4月より「全国治験活性化3力年計画」、さらに引き続き平成19年4月より「新たな治験活性化5力年計画」が施行されました。その結果、当院におきましても企業主導治験の受託・実施に関しては治験管理室を事務局として体制が整備されました。しかし、今般の5ケ年計画では、標題が「臨床研究・治験活性化5ケ年計画2012」とあるように「治験活性化」のみならず、「臨床研究」の活性化にも重点が置かれています。すなわち市販後のエビデンスの創出や適応拡大、医療機器の改良のほか、手術や放射線治療等を含めた医療技術の向上のための臨床研究についても推進すべきであるとされています。

従いまして、これからの臨床研究部が担うべき使命は「職員一人ひとりが実地臨床に埋没することなく学会・研修参加等を通して臨床研究に関する知識・技術を習得し、自ら臨床研究を考案し新たなエビデンス作りに参画できるような体制整備」の牽引役にあると考えています。少子高齢化が不可避のわが国において、その時代の先端を行く地域の中核病院からエビデンスを発することが将来の日本の少子高齢化医療の指針作りに寄与するものと確信しています。

臨床研究部の概要

設置年度
平成16(2004)年4月1日
院内標榜臨床研究部
平成20(2008)年4月1日
臨床研究部
研究組織
NHO臨床研究ネットワーク施設
循環器、脳卒中、 がん、成育、免疫異常、エイズ、内分泌代謝、消化器、呼吸器、肝、腎、骨の運動器、精神、感覚器、災害医療、外科・麻酔、その他
科学研究費補助金取扱規程研究機関
【厚生労働省指定研究機関番号: 0001123348】
【文部科学省指定研究機関番号: 87502】
治験中核拠点施設協議会参加施設
その他共同研究グループ
西日本がん研究機構(WJOG/呼吸器グループ)
九州肺癌研究機構(LOGIK)
九州消化器癌化学療法研究会(KSCC)
運営組織
臨床研究部運営委員会

組織図

組織図

分子病理学研究室

室長
川中 博文

個別化医療は、悪性腫瘍など深刻な疾患に対してより効果的な治療を提供するための方向性として大いに注目されている。個別化医療の根幹は、当該患者に起こった腫瘍の遺伝子構成や蛋白構成に即した治療を目指すことであり、その結果より効果的で副作用の少ない治療が期待できる。

腫瘍バンクとは、生検あるいは手術で切除された腫瘍組織もしくはそれから得られた蛋白、核酸などを体系的に保管するシステムであり、個別化医療を実施するためには必要不可欠である。保管された資源は、当該患者に最適な治療(個別化治療、テーラーメイド治療)に利用されるとともに、同意が得られた場合には新しい治療の開発研究の目的でも使用することができる。インフォームドコンセント取得やその記録などに関する技術、個人情報や遺伝情報の保護に関する技術も高度なものが要求される。

1. 課題名

「個別化医療を実践するためのがん患者データベースを基盤とする腫瘍バンクの確立」

2. 研究概要

当センターにおいて切除されるヒト臓器腫瘍組織および非腫瘍組織を系統的に凍結保存するシステムを確立し、これらと臨床情報を連携させるためのデータベースの整備を行う。保存した組織から抽出した蛋白および核酸を解析することにより、個々の患者に適切な治療法(個別化医療)の開発と実践を行う。さらに、それらを新しい治療法の開発に利用する。

3. 研究の意義

がんに関連した遺伝子異常の詳細かつ網羅的な解析と信頼性の高い臨床病理学的情報とを密接に連携し、個別化医療を実践するための技術的基盤が近年急速に整いつつある。倫理的諸問題への検討も進められており、こうした基盤の上に立ったヒト腫瘍の質の高い個別化医療の実践体制が待たれるところである。

4. 業務内容

(1) 凍結保存

当院で実施される外科切除臓器のうちインフォームド・コンセントが得られたものを対象として、組織採取と凍結保存を行う。また、他の研究者などからの保存試料の供給依頼への対応、コンピュータによる試料の在庫管理、および液体窒素タンク運転状況の維持管理を行う。

(2) マイクロダイセクション

腫瘍細胞集団や腫瘍間質成分など、組織内の微小領域に特異的な遺伝子異常の解析を実現するため、凍結組織切片から目的とする細胞のみを実体顕微鏡下に採取する技術であるマイクロダイセクションを用いた核酸および蛋白の抽出を行う。

(3) がん患者データベースシステムの開発

がん患者データベースを開発し、予後追跡と治療効果の解析に利用する。本システムは、術後時間を経て再発した腫瘍に対する治療オプションの選択にも有用と考えられる。

(4) 大腸がんにおけるバイオマーカーの開発

大腸がんの約80%に 上皮成長因子受容体(EGFR)の高発現が認められ、EGFRは、細胞外からリガンドが結合すると、下流へのシグナル伝達が起こる。下流のシグナル経路としては RAS/RAF/MAPK経路、PI3K/AKT/MTOR経路、JAK/STAT経路などが存在し、RAS経路におけるRAS遺伝子変異やBRAF遺伝子変異は抗EGFR抗体薬の治療効果を予測するバイオマーカーとしてよく知られている。しかしながら、大腸がんのドライバー遺伝子変異は見つかっておらず、新たなバイオマーカーや治療標的因子の開発が急務である。

Rasの下流では、上記以外の経路として、DOCK1によるRACの活性化が癌細胞の生存、浸潤に重要な役割を果たしていることが報告されている。当研究室では、DOCK1発現が大腸がん治療の新たなバイオマーカーや治療標的となるかを明らかにするために、大腸がんの臨床検体を用いてDOCK1発現の臨床病理学的意義を研究している。

(5) 倫理的問題

インフォームド・コンセントの体制、遺伝子情報の保護、および事故・諸問題への対応をマニュアル化する。研究協力者や治療参加者およびその親族から寄せられる遺伝子問題について、臨床遺伝専門医を中心とする遺伝カウンセリングを行う。

5. まとめ

当院での診療に裏付けられた高品質な組織試料と付帯情報を有機的に連携する本システムを構築することにより、地域基幹病院において個別化医療を実現する意義は大きいと考えられる。

臨床腫瘍学研究室

室長
矢野 篤次郎(がん治療センター部長)
副室長
鶴田 悟

臨床研究部の1部門として臨床腫瘍学を研究しています。当院は平成20年に地域がん診療連携拠点病院の認定を受け、消化管(食道、胃、大腸)、肝胆膵、乳腺、肺、女性器(子宮、卵巣)、腎・前立腺、皮膚など大分県東部医療圏の悪性腫瘍疾患に対する診療を担っています。がん診療の質を担保するためには、臨床研究は欠かせません。院内がん登録をはじめ様々な診療データを蓄積・解析することによって、日常の診療をレビューし改善するPDCAサイクルを回すことが必要です。

さらに、臨床研究の結果を学会や論文を通じて発表することはもちろん、得られた結果よりさらに先のエビデンスを得るために臨床試験も提案しています。

臨床遺伝学研究室

室長
古賀 寛史
副室長
穴見 愛

産科部門

診療に関しては、出生前検査(クアトロテスト、羊水検査)を患者さんの背景、希望に沿って行っています。また今後は、臨床遺伝及び遺伝カウンセリングに関するシステムの整備を進めており、希望者にはカウンセリングを提供できる環境が整ってきています。登録事業として、日本産婦人科学会周産期登録事業に当院で出産した症例に関し全例登録を行っております。また、大分県周産期死亡症例登録事業へ当院の対象例の登録をし、症例の検討を行っております。こうした疫学研究への協力とともに当院産科で大分県内の未受診・飛び込み分娩妊婦の調査を実施し、大分県へ報告しております。

新生児部門

臨床で遺伝カウンセリングが必要とされる場面が増えており、先天異常・がんゲノム診療を中心に遺伝性疾患の診療対応を開始しました。臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを担当しています。

臨床工学研究室

室長
松本 敏文
副室長
藤本 書生

臨床工学研究室では診断や治療における医療材料の評価や医療機器を用いた研究とともに人間工学に基づいた医療を考えます。現在、人工股関節・膝関節の機能的評価や長期成績調査、脊椎外科インストルメンテーション手術についての調査を行っています。今後は歩行分析、筋評価、関節バイオメカニクス、骨・関節疾患の手術についての画像シミュレーションなどの研究を行うことができるように少しずつソフト、ハード両面の機器整備を進めていきたいと考えています。

画像・精神医学研究室

室長
古屋 暁生
副室長
児玉 健介

当院では320列の多列検出器を備えたCT検査装置が導入され、1mm以下の薄いスライス厚による精細な画像が得られるため、三次元画像処理により立体的な把握ができ、血管系の精度の高い画像描出を行っています。さらに、MRI装置もノイズの少ない高画質の画像が撮影できる機器を導入し、脳神経領域では拡散強調像に加えMR還流画像撮影も可能となり、脳血流の詳細な評価が行えるようになりました。最新ソフトウエアと専用ワークステーションを導入し、MRIトラクトグラフィーの作成を行って脳内の神経線維までも描出可能としていく計画です。本研究室では、臨床診断のみならず精神・神経疾病の解明と新たな治療法開発の基礎となる臨床研究に役立てていく所存です。

治験管理室

室長
川中 博文(臨床研究部長)
副室長
末永 康夫
室員
小山田 純治(薬剤部長、治験事務局長)
山下 愛登(治験主任、治験コーディネーター)
松井 のどか(治験コーディネーター)
板井 正子(治験コーディネーター)
佐藤 暁子(治験コーディネーター)
阿部 亜貴子(治験コーディネーター)
渡辺 直子(治験事務)

当研究室の主な業務は、臨床試験の必要性について対象の患者さんに説明し、院内関係部署における治験業務が円滑に行えるようにサポートする「臨床研究コーディネーター(CRC)」としての活動、治験に関する事務や担当医への連絡を行う「治験事務局」、受託研究・治験審査委員会を実施運営する「受託研究・治験審査委員会事務局」業務を担当しています。

治験管理室には、5人の臨床研究コーディネーター(CRC)が所属しています。CRCは、試験に参加頂く患者さんが不安や疑問を解決し、試験の意味を十分理解いただいた上で参加に同意していただけるよう補助説明をしています。試験を遂行する為に、厳密に設けられた投与方法や検査内容、来院スケジュールを組み立てることもCRCの役割です。近年、ドラッグラグを無くすべく、日本も海外と同時に新薬開発に取り組むグローバル試験が盛んになっており、当院での契約も増えてきています。そのような中で、より正確なデータを集められるよう、複雑な手順を整理し、院内関係部署への連携をとり、試験が円滑に行えるようサポートしています。また、患者さんから得られたデータはより早く依頼者へ提供出来るよう、迅速な報告書の作成を心がけています。このように治験管理室では各診療科で実施される治験や臨床試験を支持・管理し、より良いデータから、時には世に出てくるべきではない薬の候補の選別を行う大事な役割を担っています。有効で安全な薬剤・治療法がいち早く患者さんの手元に届くよう、日々努力しています。

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